神輿(みこし)や山車(だし)・屋台(やたい)
日本の伝統的なお祭りでは、必ずと言っていいほど、このうちのどれかは登場するのではないでしょうか。
でも、これらの違いは?と聞かれると、意外と答えられませんよね。
そこで今回は、神輿・山車・屋台の違いについての、世界一分かりやすい解説にチャレンジしてみようと思います。
(因みに、「屋台」とは、お店の屋台ではなく、ここでは祭事で使用される「屋台」のことを指しています。)
一目瞭然 神輿・山車・屋台の違いを一覧表で!
まず最初に・・・
これから説明することをシンプルな表にまとめてみましたのでご覧下さい。
| 神輿 | 山車 | 屋台 |
車輪の有無 | なし | あり | |
移動方法 | 担いで | 引いて(曳いて) | |
形状 | お宮型 | 山型 | お宮型 |
人が乗る | NG | OK | |
神様は | 神輿の中に | 頂上(天)にいる | |
目的 | 神様の移動 | 神様をもてなす | |
盛り上げ方 | 神輿を上下に揺らす | 山車・屋台の上でお囃子を | |
装飾 | ある程度の型がある | バラエティに富んでいる |
この表だけでも、何となくイメージが湧いたのではないでしょうか。
山車と屋台の違いは、形状が「山型」(山のように頂部が突き出た形)か「お宮型」(神社の建物のような形)かの違いだけで、あとは同じものと考えてよいかと思います。(「屋台」も含めて「山車」と一括りに呼ぶこともあります)
また、山車・屋台は地域によって色々な呼び方をされます。
一例を挙げると、「山」、「曳山(ひきやま)」、「舁き山(かきやま)」、「山鉾(やまほこ)」、「山笠(やまかさ)」、「地車(だんじり)」、「祭車(さいしゃ)」、「御車(おくるま)」、「太鼓台(たいこだい)」などがこれに当たります。
例えば、「曳山(ひきやま)」と呼ばれる山車が登場する代表的なお祭りに、九州の「長崎くんち」や「唐津くんち」が挙げられます。
↓「長崎くんち」の様子です。
出典:Nagasaki365
↓「唐津くんち」の様子です。
出典:るるぶ.com
両方とも、かなりの数のオリジナリティ溢れる曳山が多数登場しますので、興味のある方は、こちらからご覧下さい。
では次からは、上の表でまとめたそれぞれの項目について見ていきたいと思います。
移動方法について
「神輿」と「山車」・「屋台」の大きな違いは、車輪が「付いている」か、「付いていない」か、です。
神輿には、車輪は付いておらず、人が担いで移動します。
↓車輪のついていない神輿は人が担いで移動します。
出典:毎日新聞
それに対して、山車・屋台の最下部には車輪がついており、人が引いて(曳いて)移動します。
↓車輪のついている山車・屋台は人が引いて(曳いて)移動します。
出典:熊谷市HP
当然のことながら、神輿は「人が担ぐことのできる」規模にする必要があり、重くても1tを超える程度のものが一般的です。
因みに、日本最大の神輿は東京都の富岡八幡宮にある、高さ4.4メートル、重さ4.5トンの神輿です。
(但し、この神輿は大きすぎて担ぐことができず、展示されているだけです)
↓日本最大の神輿です。
出典:富岡八幡宮HP
それに対して、車輪の付いている山車・屋台は大きな規模のものでも移動することができます。
大きなお祭りで使用されるものは重さ数トンにも及び、大勢の人で力を合わせて引く姿が、見どころの一つにもなっています。
因みに、日本最大の山車は石川県七尾市の青柏祭で使用される曳山で、重量約20トンと言われています。この曳山は、サイズが大きいが故に「でか山」とも呼ばれています。
↓青柏祭で使用される、日本最大の曳山(でか山)です。
出典:毎日新聞
形状について
神輿は一般的には「お宮型」といって神社の建物のような形をしています。例外的に、人形などの装飾物が乗った神輿もあります。
それに対して、山車は「山型」といって山のように中央部が盛り上がった形をしています。
屋台は最下部に車輪が付いているところは山車と同じですが、頂部には屋根がかかっており、「お宮型」となります。
人が乗ってもいいのはどちら?
結論から言うと、人は神輿には乗れず、山車・屋台には乗れます。(一部例外あり)。
神輿は神様が神社内でお乗りになり、神社の外を移動される際に使用するのが目的とされています。
つまり、神輿の中に神様がいらっしゃる状態で移動しています。
あくまでも神様専用の乗り物ですので、人は乗ることができません。
神様を畏れ多い存在として、人より高い位置で担いでいるので、神輿行事中の休息や保管の際も、神輿は地面に下ろさず台の上に置かれます。
↓休憩所で台の上に置かれた神輿
↓保管の際、台の上に置かれた神輿
それに対して山車・屋台は、頂上(天)にいらっしゃる神様に地上に降りてきていただいて、「もてなす」のが目的とされています。
神様のおそばに従いおもてなしをするために、人も山車・屋台に乗ることができます。
賑やかなお囃子を奉納するのも、おもてなしの一種なのではないでしょうか。
↓山車の上で賑やかな山車を披露する様子です
因みに、山車の上でお囃子や踊りを奉納するお祭りで有名なのは、秩父夜祭ですね。
分かりやすくまとめた記事があるので、興味のある方はご覧下さい。
装飾の意味は?
神輿も山車・屋台も、町の中の至るところを回りますが、この意味は両方とも、神様に「御祓い」をしていただき、福を分けていただくため、と考えられています。
ただ、神輿の方は、神様が神社内でお乗りになるもので、その神社に由来する装飾や伝統を重んじた装飾、つまり畏まった装飾が施されているものが多く見受けられます。
↓伝統的な装飾の神輿
出典:歴史の 浪漫街道
それに対して、山車・屋台の方は、神様は頂上(天)から降りてきていただき、おもてなしをする必要があるため、派手でオリジナリティに富んだデザインのものが多いです。
神輿のような社殿を模したものもあれば、人形や船を模したもの、ライトアップされた装飾物など、思考を凝らした様々なデザインのものがあります。
↓様々なデザインの山車
出典:山車祭りと山車模型
合わせて読みたい:「神輿や山車は英語では何と言う?海外のお祭りに登場するのはどんなもの?」
まとめ
以上、いくつかの視点から神輿と山車・屋台の違いについて解説してみました。
これらのことを知った上で、神輿や山車・屋台を見てみると、また違った発見があるかと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。